ピアノ
ラビ・エドリーは何度も東北を訪れ、当時は市役所や仮設住宅で暮らしていた現地の人々を助けました。仮設住宅は、政府が新しい地域を開発するまで、一時的な住居としての役割を果たすものでした。
ある時、ラビ・エドリーは住んでいる人たちがうまく新しい現実にうまく対応できているかどうか、様子を伺おうと、一軒の仮設住宅のドアを叩きました。何か必要なものがあるかどうか、できることはないか、知りたいと思ったのです。その家の9歳のお嬢さんに、今どんな気持ちかと尋ねると、彼女は「ピアノの練習ができなくなって悲しい」と答えました。津波によって家は破壊され、大好きだったピアノも流されてしまったのです。ラビはなんとかしてピアノを手に入れてあげるからと、彼女に約束しました。
そして、ラビ・エドリーはピアノを手に入れることができたのです。
ナショナル麻布スーパーマーケットでは、店の外側に大きなかごを置き、ラビやハバッド・ジャパンと協力して、顧客に、東北の人たちのための品物を寄付してくれるように呼び掛けていました。その日、店長の鳥海さんがラビに電話してきて、ピアノを寄付したいお客さんがいると伝えてきました。ラビ・エドリーは、これは神様からの素晴らしい贈り物だと思いました。東北の少女がピアノが欲しいと言ったその同じ日に、東京で、ピアノを寄付したい人が現れたのです。信じられないことでした。
ラビ・エドリーはすぐに配送会社のクロネコヤマトに手配を頼み、寄付してくれる方の港区の家からピアノを引き取ってもらい、すぐに東北で家族が待つ家にピアノを直接配送してもらいました。
数日後にピアノが届くと、少女の喜びようといったら言葉に尽くせないほどでした。やっと音楽の練習をすることができるようになって、嬉しくて胸がいっぱいの様子でした。悲惨な状況に囲まれる中で、音楽を練習するのは、彼女にとって大きな慰めであり、希望の源でもありました。少女はラビに感謝の手紙を書き、微笑んで見守る両親とともに、ほぼ新品のピアノを幸せそうに演奏している写真も同封してくれました。